新学習指導要領の中で、学びに向かう力・人間性が重要視されるようになり、「主体的に学び、自ら成長していける力(=自己調整力)」の育成が求められています。
ここでは、自己調整力を養う取り組みの一つとして、「自由進度学習」についてご紹介します。自由進度学習は、学習の進め方を学習者が自分で決められる自己調整学習の一つの方法です。
自由進度学習
一般的な授業では、同じペースで授業が進んでいきます。理解がゆっくりな子はついていけず、理解が速い子はわかっていても周りに合わせて待っていなければなりません。
自由進度学習であれば、自分のレベル・ペースに合わせて学習を進めることができます。周りに合わせたり、比べたりする必要がなくなるため、自己成長実感も味わいやすくなります。また、「めあてを立てる」→「課題に取り組む」→「結果を振り返る」サイクルの中で、自身を客観的に分析する力が身についていきます。
自由進度学習とQubena
Qubenaは、子どもたちが問題を解き、 過去の単元や前の学年の内容につまずきがあると、その子の理解度に合わせた難易度の問題を出題してくれます。学力差がある場合でも、一人一人に応じた問題をそれぞれのペースで進めることができるので、自由進度学習との相性がよいのです。
単元計画(例:第5学年算数科「分数(1)」)
例えば、第5学年算数科「分数(1)」は教科書では図①のように全9時間で構成されていますが、図②のように計画しなおします。なお、「自由進度学習」としているところは、計画の時点では時数を決めず、弾力的な運用ができる柔軟性を持たせます。
自由進度学習の進め方
自由進度学習と指定した範囲は、基本的に子どもたち各々で学習を進めていき、わからないところがあれば先生や友達に相談するというスタイルを取ります。
一単位時間は導入→展開→終末という流れで進んでいきます。
導入では、授業冒頭で通常45分の指導内容を10分程度にまとめたミニレッスンをします。その後、各々で自分の「めあて」を記入します。
展開では、自分が立てためあてに沿って、どんどん課題を進めていきます。教科書やドリル、Qubenaなど使う教材もさまざまです。また、一人でやる、友達とペアやグループになって学びあう、先生に質問するなど、取り組み方も自分に合った方法で進めていきます。
終末では、自分が立てためあてに対しての振り返りを記入します。振り返りをきちんと行うことで、自分がわからないポイントを明確にすることができます。
子どもたちからの反応
このような形で授業を進めたところ、子どもたちからは
・早い人のペースに合わせなくても、自分のペースで進められる安心感がある
・気軽に質問したり、教え合ったりできる
といった感想が多く寄せられ、もっと自由進度学習をしてみたいという意欲的な発言も見られました。
まとめ~自由進度学習のメリット~
①教えてもらうのではなく、自ら学ぶことで理解力が増す
自ら学ぶ、もしくは子どもたち同士で活発に教えあうことができる
話し手と聞き手が交互に変わり、キャッチボールができる。→的確な質問と説明を通じて、理解が深まっていく
②自分がもっとも成長できる学ぶべき単元を選ぶことができる
学習する範囲は十人十色で、過去の単元をやっている子もいれば先の範囲を学習している子もいる
自分が最も手応えを感じられそうな単元を選ぶため、負荷がちょうどよくなる
③自分をメタ認知できる
学習の手応えを感じられそうな範囲を選ぶ =仮説
実際に解いてみて結果を振り返る = 検証
どこで間違えたかやなぜ間違えたかを具体的に書く = 分析
上記の一連の流れで学習するため、自身を客観的に分析できる
④表現力が身につく
振り返りは具体的に文章にまとめる必要があるため、トレーニングになる